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DATE: 2013/06/01(土)   CATEGORY: 未分類
出会いのとき
私の住まいは現在、借家である。
誰も借り手がいなくて長い間空き家だったところだ。
付近は農家が多くてのんびりしたところだ。
ここは、もと名主の家だったとのことだが、ほんとは、同じ敷地内の隣接したところに、その名主の母屋があったようだ。。
そこは火事で焼けたそうで、私が移り住んだときには、もうなかった。礎石が残っていて、そこにかつて家があったことがわかるていどである。

敷地内は草はぼうぼう、はやし放題だ。本来なら、私の責任で手入れしなくてはならないのだろうが、めんどうなのでそれはやらない。
一応りっぱな門と、けっこう頑丈な塀があって、外から見るとお屋敷然としてはいるが、その門も塀も壊れかけているし、中はそんなだ。

家は、八畳の居間と、十畳以上ある板の間、それに昔ながらの土間の台所である。古くて腐っているが、納屋もついている。
トイレは残念ながら汲み取り式・・・、それだけが難だ。
他はなんの不足もない広さである。むしろ都会のマンション生活に慣れた私としては広すぎるくらいだ。

周囲に家はない。裏は雑木林が広がり、秋にはそこでけっこう栗やあけびなどが取れる。庭には柿の木もあって、柿も食える。

これだけ広くても家賃は5千円と格安である。
都内で二つ立て続けに商売をつぶして、逃げるようにここへ引っ越してきた。3年前のことだ。
逃げるようにというのはまさに逃げる「ように」であって、借金を踏み倒したりして、ほんとうに逃げてきたわけではない。それだけは、自分の名誉のために言っておく・・
正直いって、家賃に惹かれてやって来たのである。助かってる。
でも、いまはそれだけではない。のんびり暮らせるここがとても気に入っているのだ。

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私がおどろ姫と出会ったのは、ここへ越してきて2日目のことである。
夜眠っていると、人の気配がし、目を開けると、仰臥している私の脇に、ひとりの女が立っていた。
むろん、霊魂だけの女であることはすぐにわかった。はっと起きようとして身体が金縛りになっていることに気づいたからである。

私は、小さいころから、そうした人たちの姿は何度も見て、よく知っている。そのころよく見たのは、部屋の隅に寂しそうに佇んでいる山伏とか、にこにこ笑う上品なおばあさんの姿で、その女ははじめてだった。

『ああ、ここの地縛霊かな・・』
家を借りるときチラッと聞いた「幽霊屋敷」という言葉がすぐに思い浮かんだ。
やっぱりいたんだと思うとちょっとうれしくなり、いささかほっとする部分があった。家賃が安すぎて申し訳ないという気がしていたからである。その家の価値を下げていた噂の存在が、実際にいてくれたわけだから、これで帳尻が合うという計算になる・・

私には、子供のころから、霊魂だけの人の姿が見えることがある。
最初はそのことに気がつかず、よくその人のことを口にして親に叱られたものだったが、大きくなって、この世のわけがわかってからは、決してそのことを話さなくなった。
でも、やっぱり見えるものは見えるのだ。
ときには人型をしていない、ただの光の塊のようなこともあるが、いずれにしてもこの世のものではない。

さて、私を金縛りにした女は、最初とても厳しい顔つきをしていた。目の下が濡れているようで、悲しげなようにも見えた。しかし、悲しみよりは強い怒気が感じられた。
私は、彼女のその怒気がどこから出ているのか興味を覚えたので、じっとその顔を見上げていた。

美しい女だと思った。長く背中まで垂れた髪は、梳かしていないもののようで、ひどく乱れていたが、目鼻だちは整って、スタイルもよかった。
美しい女だから、よけい興味をもったのではないかといえば、それはそのとおりである。

私が、興味深げに見上げているうちに、ふっと女はいなくなった。
尿意をおぼえたのでトイレに立った。むろん金縛りは解けている。
そういう場合、トイレにまでついてくることもあるので、ちょっと期待してふりかえったりしたが、その夜はそれきり彼女とは会えなかった。

でも、寂しがる必要はなかった。私が彼女に抱いた興味を彼女はすでに感じとっており、そのことにいささかの喜びを感じて、すぐにまたやってくるだろうことはわかっていたからである。
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