DATE: --/--/--(--)   CATEGORY: スポンサー広告
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
page top
DATE: 2013/06/22(土)   CATEGORY: 未分類
あくる日
あくる日、ささやかなパート仕事を終え、途中で買ってきた揚げ物などで晩飯をすませたあと、私はテレビをつけずに待っていた。
テレビのように明るくうるさい音の出るようなものに、うっかり見入ったりしていると、ああいう人たちは出て来づらいように思うからである。

彼女はまたやってきた。
早い時間から、奥の部屋を暗くして、敷きっぱなしのふとんに寝転がっていると、果たして、部屋の隅に彼女はあらわれた。
しかし、奇妙なことに、そのとき、彼女から、昨夜のような激しい怒気が感じられなかった。
『昨日、怒ってたけど、何に腹をたててたの?』
私は、彼女の存在を感じたとき、すぐにそう聞いた。もちろん声には出さずにである。
すると、彼女から、強い嫉妬の念が伝わってきた。
『ああ・・、好きだった男に裏切られたのかなあ・・』
そう思ったとき、ふっと私の眼前に、男と女が片手を握り合いながら、寄り添い抱き合っている姿が浮かんだ。二人の着物と頭髪から推測して、すぐに明治時代のことだと思った。あるいは大正時代か、もしかするともうちょっと後のことかもしれないが、私にはよくわからない。どうでもよいことだが。

・・、男と抱き合っていたその女は、彼女ではなかった。
それはおそらく、彼女自身の見た光景の実転写であったろう。
しかも、そのすぐあとにその転写の中の女性が、花嫁姿でひとりの老婦人に手を引かれながら、大きな家の門に入っていく姿が、また浮かんだ。
『・・・』
私は何も言えなくなった。
暗い部屋の隅で、彼女はひどくつらそうに顔をゆがめ、涙を流していた。昨日感じたのとと同じ怒りが伝わっきた。
『・・だまされたのね・・?』
そう、問いかけたわけではなかったが、彼女はすぐにまた別の光景を私に伝えてきた。
それは、こちらがつらくなるような、明るい男の顔だった。
彼は、こんどは彼女を抱き寄せようと手をさしのべていた。
そして・・、それをかき消すように、結婚した二人が血まみれで倒れている光景が、見えた。
さらにその次には、火が見えた。
火は大きな屋敷を轟々と、小気味よく燃やした・・
私は、火に快感を覚え、もっと燃えろと思った。彼女の思いが、そのまま伝わってきたのだ。

と、そこまで彼女が「話し」終えたとき、部屋の隅にあった彼女の姿が、ふっと消えた。
だが、いなくなってしまったわけでないことは、感じていた。
私はふとんからのろのろと立ち上がり、襖を開けて板の間に出ようとした。そこに彼女がまだいることがわかったからだ。

だが、見たくない彼女の姿がそこにはあった。高い天井のすぐ下の太い梁から、縄で首を括り、ぶらんと下がった、いやな姿を・・
スポンサーサイト
DATE: 2013/06/01(土)   CATEGORY: 未分類
出会いのとき
私の住まいは現在、借家である。
誰も借り手がいなくて長い間空き家だったところだ。
付近は農家が多くてのんびりしたところだ。
ここは、もと名主の家だったとのことだが、ほんとは、同じ敷地内の隣接したところに、その名主の母屋があったようだ。。
そこは火事で焼けたそうで、私が移り住んだときには、もうなかった。礎石が残っていて、そこにかつて家があったことがわかるていどである。

敷地内は草はぼうぼう、はやし放題だ。本来なら、私の責任で手入れしなくてはならないのだろうが、めんどうなのでそれはやらない。
一応りっぱな門と、けっこう頑丈な塀があって、外から見るとお屋敷然としてはいるが、その門も塀も壊れかけているし、中はそんなだ。

家は、八畳の居間と、十畳以上ある板の間、それに昔ながらの土間の台所である。古くて腐っているが、納屋もついている。
トイレは残念ながら汲み取り式・・・、それだけが難だ。
他はなんの不足もない広さである。むしろ都会のマンション生活に慣れた私としては広すぎるくらいだ。

周囲に家はない。裏は雑木林が広がり、秋にはそこでけっこう栗やあけびなどが取れる。庭には柿の木もあって、柿も食える。

これだけ広くても家賃は5千円と格安である。
都内で二つ立て続けに商売をつぶして、逃げるようにここへ引っ越してきた。3年前のことだ。
逃げるようにというのはまさに逃げる「ように」であって、借金を踏み倒したりして、ほんとうに逃げてきたわけではない。それだけは、自分の名誉のために言っておく・・
正直いって、家賃に惹かれてやって来たのである。助かってる。
でも、いまはそれだけではない。のんびり暮らせるここがとても気に入っているのだ。

 ・
 ・
私がおどろ姫と出会ったのは、ここへ越してきて2日目のことである。
夜眠っていると、人の気配がし、目を開けると、仰臥している私の脇に、ひとりの女が立っていた。
むろん、霊魂だけの女であることはすぐにわかった。はっと起きようとして身体が金縛りになっていることに気づいたからである。

私は、小さいころから、そうした人たちの姿は何度も見て、よく知っている。そのころよく見たのは、部屋の隅に寂しそうに佇んでいる山伏とか、にこにこ笑う上品なおばあさんの姿で、その女ははじめてだった。

『ああ、ここの地縛霊かな・・』
家を借りるときチラッと聞いた「幽霊屋敷」という言葉がすぐに思い浮かんだ。
やっぱりいたんだと思うとちょっとうれしくなり、いささかほっとする部分があった。家賃が安すぎて申し訳ないという気がしていたからである。その家の価値を下げていた噂の存在が、実際にいてくれたわけだから、これで帳尻が合うという計算になる・・

私には、子供のころから、霊魂だけの人の姿が見えることがある。
最初はそのことに気がつかず、よくその人のことを口にして親に叱られたものだったが、大きくなって、この世のわけがわかってからは、決してそのことを話さなくなった。
でも、やっぱり見えるものは見えるのだ。
ときには人型をしていない、ただの光の塊のようなこともあるが、いずれにしてもこの世のものではない。

さて、私を金縛りにした女は、最初とても厳しい顔つきをしていた。目の下が濡れているようで、悲しげなようにも見えた。しかし、悲しみよりは強い怒気が感じられた。
私は、彼女のその怒気がどこから出ているのか興味を覚えたので、じっとその顔を見上げていた。

美しい女だと思った。長く背中まで垂れた髪は、梳かしていないもののようで、ひどく乱れていたが、目鼻だちは整って、スタイルもよかった。
美しい女だから、よけい興味をもったのではないかといえば、それはそのとおりである。

私が、興味深げに見上げているうちに、ふっと女はいなくなった。
尿意をおぼえたのでトイレに立った。むろん金縛りは解けている。
そういう場合、トイレにまでついてくることもあるので、ちょっと期待してふりかえったりしたが、その夜はそれきり彼女とは会えなかった。

でも、寂しがる必要はなかった。私が彼女に抱いた興味を彼女はすでに感じとっており、そのことにいささかの喜びを感じて、すぐにまたやってくるだろうことはわかっていたからである。
Copyright © 新・おどろ姫. all rights reserved.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。